海と山が好き

海と山が好きだけど埼玉に住むおっさんが遭遇したアジャイルとかのはなし

『別にスクラムは目的ではないので』との向き合い方。

「別にスクラムは目的ではないので」

親の顔よりよく見かけるフレーズ(当社比)

スクラムの規定しているロールやイベントをやらない際に使われる。Scrumbut みたいな。

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もちろんスクラム自体は目的ではないし、してはいけない(と、個人的には思っている)が、スクラムがなぜ機能するのか、を理解せずに、上の言葉を持ち出してねじ曲げる場面を見ると、少し危ないと思っている。

(もっとも、スクラムだけじゃなくて、PMBOKCMMI でもよく聞いたし同様だ)

 

 

 

スクラムでは規律を大事にしている。というか、数あるアジャイル開発手法と分類される中ではかなり規律に厳しい方だと思う。

タイムボックスなんかはその特徴的なもので、それぞれのイベントが定義する時間以上の時間をかけてはいけないように規定されている。

スプリントのタイムボックスは守っているが、デイリースクラムの15分というタイムボックスが守られていない場面はよく見る。

スクラムは目的ではないので、」という枕詞はこうした規律を破る上で使いやすい言葉として使われる。そしてスクラムマスターはグヌヌってなる。ドンマイ。

 

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個人的には、スクラム問題を炙り出すフレームワークとして非常に有効だと思っている。

規律があり、検査と適応による問題改善のための枠組みが明示的にインストールされいるため、そう感じている。

(特に、改善の枠組みがチーム自身がドライブするようになっているのがイイ)

 

要は、規律を守ることが目的なのではなく、なぜ規律があるのかを理解した上で、規律を破りたくなる状況から問題を炙り出すことができる(やりやすい)という点が重要。

 

自分たちの現状に合わないので、この規律は守りません、っていうのは、

「遅延しているのは元のスケジュールが悪いので、スケジュールは守りません」

っていうのと同じレベル。何言ってんだお前、ってなる。 

スケジュールだと違和感ないのは、スケジュールをなぜ守るべきか理解しているから。

スクラムの規律をそれぞれなぜ守るべきか理解していないと、規律を守る理由もなくなる。

(それでも規律を守らせようとするならただの狂信者でさらにヤバイと思う。)

スケジュールの基準線があるから、バーンダウンチャートは遅れているかどうかを判断できる。

もし基準線(ベースライン)がなければ、現状の進捗について判断はできない。

(3つの質問とかどうでもいい。要は終わるのか終わらないかだ。)

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規律も同じように扱うことができて、規律をひとつのベースラインとして、それに自分たちを照らすことで、自分たちのやり方のまずいところを炙り出せる。

そうした炙り出し方をしない場合、何を改善すべきかを探すのはチームメンバーのお気持ちドリブンになり、施策が効果に結びつくかは運次第になる。

 

規律と現状が Conflict して困るなら、考えるチャンスが勝手にやってきただけで、なぜその問題が発生するのか自分たちを検査するだけで良い。 

『困った時がチャンスです。頭の良くなるチャンスです。』

っていう、過去の偉人が言っていた言葉があった。まさにこれ。

タイトルにあるような言葉を許してしまうと、そうした改善の種に目を背けてしまう。

スクラムの根幹である検査と適応ができていない。検査して黙殺するならスクラムやる意味ないですよね?ってなる。
 

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例えば、デイリースクラムが 15 分で終わらないのは明確にヤバイ。

たかだか8時間程度の作業を決めるのに5%以上使うのは非効率すぎる。

デイリースクラムは全員の時間を同期コミュニケーションで拘束するので、相当注意深く使わないと物凄いムダを産む。

15分で終わらないチームを見てみると、そもそもチームで Swarming していないので、着手しているタスクが多すぎて話すことが盛り沢山になってしまっていたりする。

要は規律を守ろうとすると、なぜこんなに長々と話しているんだっけ、に焦点が当たって、ムダの発見と改善機会に巡り合える。

それを守らずに、やっていることの全部の共有をしていても得るものはない。

経験上、20分を超えるようなデイリースクラムで得られるものは足腰の筋力くらいしかない。

 

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Done の定義やその他のタイムボックス、ロールなども同様なことが言える。

リーンやXP で言えば WIP の制約なんかも同様。

 

規律という制約があるから、改善の余地に気付く。

制約を守るからこそ、よりチームとして強力になっていく。

制約を破ってもクラピカみたいに死ぬわけじゃないから破りやすいんですけどね。

 

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また、WIP 制約のように、制約を守るだけでなく、さらに厳しい制約に変えることで、チームにたりていない点を炙り出して、効果の高い改善施策を打つことができる。

 この辺りはカンバン仕事術とか読むと進め方が参考になりそう。

(とにかく20%下げろ の項など参照。しかし在庫がないなAmazon...)

カンバン仕事術

カンバン仕事術

 

 

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身の回りのことで言えば、先日、カバンを小さくしたら、今までの持ち物が入り切らなくなった。

大きなカバンに戻すのではなく、今までの持ち物でムダがないか考えてみると、付箋ケースがデカすぎて普段使う量の何日分もの量を持ち歩いていた。まさにムダだった。

 

また、毎月のお小遣いを減らすことによって、気づいていなかったムダに気付く、といったこともあると思う。

普段の出費を検査し、ムダを見つけ、小遣い制約の元でやりくりするにはどうしたらイイか、考えるきっかけになる。

来月どうしよう。